部屋の明るさと睡眠の関係

照明の普及により、夜でも明るい生活を享受している現代人がいきなり真っ暗な環境に置かれると、脳にまったく刺激が入らず、感覚遮断の状態になります。すると、脳が処理する情報を失って、いわば空回りしてしまい、幻聴や幻覚が現われたり、意識が混溺したりすることもあります。特に、高齢者ではそのようなことが起こることが少なくありません。したがって、不眠気味の人は、脳に多少の刺激を与えるために、真っ暗よりほの暗い状態がいいのです。具体的には、枕の周辺に置いてある時計や小物がぼんやり見える程度に照度を調整すると、精神的に落ち着いて、安心して眠りやすくなります。ところで、現代の夜間室内照度は、ろうそくや行燈を使用した約1000年前(平安時代中期)の約1000倍、ようやくランプやガス灯が普及し始めた100年前(明治時代)の約100倍も明るくなっていることを知っていますか。そして、この間の「分光分布(光源から放射される光を波長ごとに分割し、各波長の色がどの程度含まれているか表わしたもの)」は、暖色系の電灯色、白色系の蛍光灯などと飛躍的な進歩を遂げた一方で、覚醒作用を強める青色波長(ブルーライト)の多い照明器具が増加しました。